「一個上の先輩として忠告するぞ。一時の感情で自分を安売りするのはよくない。ジョークとしても面白くない」
「安売りって」井崎は疲れたOLみたいな笑いを浮かべる。「元値が大したことないだけですよ」
なんなんだこいつ。
そんなことないよって言って欲しいのか?と思ったが、同情目当てに泣き言を言うならとっくにそうしているだろう。
オレは今まで結構な人数の女の子と付き合ってきた。
口では遊びと割り切ってる素振りで実は嫉妬深い子、あなただけといいつつ速攻乗り換える子。
だけど、このガキにそんな複雑な思考ができるとは思えない。
どうなっちゃったっていい。何があってもどうでもいい。
本当に、心底、それだけなんだろう。
「…そういう態度とってると、痛い目に遭うよ」
「例えば?」
「たとえば」そう言われるとぱっと思いつかない。「えーと…悪い人に目をつけられて、取り返しのつかないようなしくじりをやらかすとかさ。世の中にはな、お前みたいな頭に血が昇ったアホガキをカモにする大人が山ほどいる。そういう大人は大概優しくて、口が巧いから、あっという間に言いくるめられる。それで気が付いたら、売り飛ばされたり、ロストバージンしてたり、あぶない薬に手を出す羽目になってる。
つまり、だからさ……そういうなげやりな態度はよくない!ってことだ!そうだそうだ!」
だんだん言いたいことがわからなくなってきた。いいんだ、こうなったら勢いで説教かましてやろう。先輩風ぴゅーぴゅー吹かしてやろう。
「だいたいお前受験生だろ!そりゃあ将来は不安だらけだし、成績の上下だって気になるし、何もかもうまくいかないのに時間ばっかり過ぎてって『もーやだー!』って思うことなんか、てんこ盛りだろーよ。けどそれで腹が立ったからってうかつな行動して、もしものことがあったら、お前はもちろんだけど、家族とか、友達とか、周りの奴にもダメージがくるんだよ。お前がお前を大事にしないで傷つくのはしょーがないとして、他人に余計な心配かけさせるのはだめだ。心にモヤモヤがたまった時は、カラオケ行ってジャムプロを熱唱するとか、飽きるまでカードファイトするとか、ちょっと贅沢して1ランク上のハンバーガーを食べるとか、あとは、あの、あれだ、
オレに相談しろ!話聞くだけなら聞いてやる!」
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