寄る辺ない子供であるレンレンにとって必要なのは、無尽蔵に注がれる愛情。
(意識すらしないレベルで)自分は選ばれている、愛されているという感覚を得ることで、
レンレンは自分を愛し、生きていてもいい、幸せになってもいいと思えるのです。
テツ、アサカ、ミナミ、そしてふわにゃんがそれを担うのですが、やがてそれは破綻します。
育児ノイローゼあるいは介護疲れにより、ついに倒れるテツ。
不安定な足場をなんとか保っていた支柱を失い、レンレンは不安の中に投げ出されます。
クオリアによって豹変し、櫂と決別してからも、テツは傍に居てくれました。
テツはクオリアを恐れ、真正面から見据えることはできませんでしたが、それでも傍に居てくれました。
そのテツが、自分の傍に居続けて、居続けて、そしてとうとうだめになってしまう。
それは自分のせい。
「死にたくない」ということは、同時に「でも死んでしまいたいほどつらい」ということ。
(満ち足りているときにわざわざ「死にたくない」とは考えませんよね)
「死にたい」ということは「つらいことから解放されたい、そのためなら死んだほうがましだ」ということ。
「でもできることなら死ぬこと以外で解放されたい」ということ。
「僕は選ばれなかった。死ぬのはいやだ。でもこの世界に僕を選んでくれる人はいないんだ」
絶望したレンレンはFF本部から逃げ出し、街をさまよう。
そしてたどり着いた公園で、でっかいこねこ「さんちゃん」に出会う。
身体があっという間に大きくなったため「ちっちゃくてかわいい生き物」という価値が消費され、捨てられたさんちゃん。
選ばれなかったもの同士、粉雪ちらつく公園(=氷の世界)で身を寄せ合い、冷たくなっていくレンレンとさんちゃん。
しかしさんちゃんは生きることをあきらめません。レンレンのつめたい頬を舐め、体をこすりつけ、
力の限り鳴きます。世界の果てのふちに自分がいる事を主張し続けます。
みい、はME、であり、私、を指します。
その呼び声に気付いた人が、ひとりだけいました。
「皇帝」ケンジくん。
彼はレンレンを服ごとお風呂に突っ込んで(さんちゃんも一緒に)ステータス「ほかほか」にし、ローマ式浴場Tシャツとイモジャに着替えさせ、あったかはちみつミルクを飲ませ、実家から送られてきたふかふか毛布でくるみます。
「なんだかわからないけど、君がこのまま寒い場所にいるのはいやなんだ」
ケンジくんは言いました。「ごはんを一緒に食べようよ」
すっかりケンジくんになついたレンレンとさんちゃん。紆余曲折を経て、しばらくケンジくんのアパートでお世話になることに。
しかし「やみくろもじゃすけ」は執拗にレンレンを夢でいじめます。
一方、入院中の井崎は弱っていきます。火傷は徐々に全身を蝕んでいきます。
アイチへの「愛」によって起こした乗換えはしかし、レンレンへの「憎悪」をも孕んでいました。
乗り換えの衝撃で井崎自身から切り離された憎悪が暗い世界で少しずつ形をとったおぞましい化け物、
それこそがやみくろもじゃすけ。
じりじりと音を立てて燃えるスチールウールの塊に似ています。
生きている井崎(光ある世界にいる井崎・愛を持った井崎)が軛となっているため、
地下鉄から出ることができず、夢の世界を通じてしかレンレンを攻撃できません。
呪いの炎に身を焼かれ、井崎がついに死んだその時、
やみくろもじゃすけはすべての軛から解き放たれ、レンレンを殺しにいきます。
・スイコの考え
1.先導アイチと雀ヶ森レンのPSYクオリアを取り戻したい。
2.井崎ユウタが上記二人のクオリアを取り去った。
3.自分たち(ウルトラレア)の力では、失われたクオリアを取り戻せない。
4.おそらくそれができるのは井崎ユウタだけである(と仮定する)。
5.もう一度乗り換えをすれば、PSYクオリアが取り戻せるかどうかはわからないが、
井崎ユウタは間違いなく死ぬ。
6.それでもかまわないから、とりあえず乗り換えをさせてみないと。
テツの考え。
一.レンが昔のぽやぽやレンレンに戻ったのは大変喜ばしいことである。
二.FFが瓦解したのはさびしいことだが、このままでも別にいいと思う。
三.しかしレンが悪夢に苦しめられるのはどうにかしたい。
四.悪夢の原因が自分にはまったくわからないのが、つらい。
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