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【2025/07/28 23:18 】 |
決着前半
トライアングラーの行く末について。
テツに拘束されたアイチの目の前で櫂を手込めにしようとするレン(そろそろファンに叩かれそうだがキニシナイ)。
その時突入した森川の捨て身攻撃によってテツは退却、アイチとレンは直接対峙します。
しかしその時点で既にアイチの体はボドボドでした。
おまけにレンは不思議魔法「PSYクオリア」を発動させてアイチを精神崩壊に追い込もうとします。
辛かった過去のエンドレスリピート。でもいくらやってもアイチは揺らぎません。
そこには必ず、櫂がカードを手渡してくれた思い出があったからです。クオリアも干渉できないほどに深く心に刻まれた記憶がアイチを何度でも励まします。
(クオリアの記憶改竄は櫂とアイチには効かない設定にしとこう。櫂には先天的なアンチクオリアがあって心の傷を忘れさせてあげられなかったとか、アイチにはアイチ自身のクオリアが萌芽しつつあったので跳ね返されたとか、そんなんで)

業を煮やしたレンはとうとう、アイチを物理的に駆逐しようとし始めます。
為すすべもなくレンに殴られ、蹴り転がされ、罵倒されるアイチ。
その暴言はしかし、レンが抱えていたしがらみでもありました。

「君に、何がわかる!愚昧な凡俗たちに溶け込めないくらいで傷つくような軟弱な君に!
優しい家族がいる君に!
帰る家こそが地獄だった僕たちの、櫂の何がわかるものか!
櫂を理解できるのは僕しかいない!僕を理解できるのは、櫂しかいない!
櫂の全ては僕のものだ!
唯一無二の僕たちの絆に、君が入る隙間なんかない!
僕から櫂を取り上げるなんて、許さない!」

レンが櫂を求め、偏執狂的に独占欲を抱くのは、櫂に愛されたかったから。
自分を絶対的に理解できる(と思い込んでいる)唯一の女性から、溢れるほどの過剰な愛を享受したかった――それこそ赤ん坊のように。
だけど傷ついた櫂に、レンが求めるような愛を与える余裕があるはずもない。櫂自身、愛に飢えていたのだから。
赤ん坊に赤ん坊は育てられない。くっつきあってお互いの指をしゃぶりあっても、それは愛情の詰まった乳房ではないし、飢えを満たすことはできない。
レンにはそれがわからないのです。櫂が自分の同類である=だから自分を受け止めてくれる という思考回路に陥ってしまった彼に櫂の傷を労わるだけの思慮分別はつかないし、愛を求めることが相手にとって大なり小なり負担となることが、わかるはずもなかった。
思うように櫂が自分を愛してくれないレンは苛立ちます。
赤ん坊ならむずがって泣き、やがて飢えて死ぬばかりでしょう。
しかし彼は欲しいものを無理矢理にでも手に入れるだけの力を、男性としての機能を備えた肉体を持っていました、
そしてそこに欲望を制御するだけの精神は持ち合わせていない……


ふたりの関係は、初めから引き伸ばされた袋小路のようなものだったのです。


「確かに僕は知らないことばかりだ…櫂くんの苦しみに寄り添うことは出来ないかもしれない。
でもひとつだけわかってることがある。

櫂くんはあなたのものじゃない。
僕のものでもない。
叔父さんのものでも、他の誰のものでもない。
櫂くんは、櫂くんのものだ。
全ては櫂くん自身が決めることで、僕にもあなたにも、誰にもそれをねじ曲げることは許されない。

だから僕は、櫂くんを悲しませるあなたから、櫂くんをもの扱いして閉じ込めようとするあなたから、
櫂くんを解放する!」


息も絶え絶えにアイチが放った一言が、櫂の心に巣くった恐怖をついに打ち払います。
それは愛への恐怖。

両親の死により「無条件の愛(破滅的作用をもたらさない愛・まだ供給が必要だった愛)」と「世界の基盤(ふつうの日が毎日続くという無根拠な安心感)」を唐突に失い、
更に叔父からは「性的欲望の大義名分としての愛(というか破滅的作用をもたらすだけの、愛ですらないもの)」を押しつけられます。
後にレンがクオリアで叔父を無力化し、似た傷を抱えたもの同士でつかの間心を寄せ合い安堵するものの、
今度はいつの間にか変質した(そのへんの理由付けは上述)レンが櫂を束縛し、抑圧し、コントロールできない未熟な性愛を振りかざして迫るようになりました。まるでかつての叔父のように。
櫂は混乱します。優しかった叔父が豹変したように、自分を救ってくれたレンが恐ろしい存在になる。愛していると言って暴力を振るう。なぜ?
無意識化では愛(親が子に与えるような、破滅的作用をもたさらない愛)を欲しているのに、
現実で目の当たりにする愛はおぞましいばかり。わからないことだらけです。
とうとう櫂は心を凍りつかせてしまいます。
過去に背を向け、世界と距離を置き、むなしい日々を過ごすことを選んだのです。
「何もかもすべてこの愛というわけのわからない執着心が悪いのだ。
もう誰にも愛されたくない。
愛したくもない……」

そんなふうにして櫂は必要以上に人と関わるのをやめたのです。
ことに男性に対しては近づきたくもありません。
そんな中でアイチがギリギリセーフなのは、その極端な「男らしくなさ」によるもの。
そしてアイチと接する度に、ほんの少しだけ「かつて幸せだった頃の自分」として振る舞うことができるから。
(しかしやがて彼も男性性が強くなるだろう。もしも少しでも好意に応えたなら、
きっと叔父やレンのように牙を剥いて自分を犯すだろう)
櫂はけして隙を見せまいと、いつも全身を硬直させながら生きてきたのです。


けれども櫂の心は解放されました。
抑圧され暴行されながら狂おしいほど求めていた感情がついに与えられたのです。
干からびた大地を潤す水のように。お腹を空かせた赤ん坊に与えられるミルクのように。

愛すること愛されることの恐怖という呪縛は消え、抑えきれないほどアイチをいとおしく思いました。
それは「こいつならおれを傷つけないだろう、おれを守ってくれるだろう」という打算を越えた、原始的な思慕。
櫂のこわばって動かなかった心と体に血が巡り始めます。
アイチのもとへ駆け寄り、多い被さるようにしてレンから降り注ぐ暴力を代わりにその身に受け、血を流します。

「アイチ、ありがとう。もういいんだ。俺の心はもう一生誰にも囚われることはない…」
そして優しくくちづけます。
血の色の夕日が部屋を染める中で。


「もうアイチに手を出すな。俺はお前に従おう……好きなようにするといい」

櫂はレンに敗北と服従を宣言します。
アイチからの愛を受けて心の傷が癒えたため、
愛のためにその身を捧げるだけの力を取り戻したのです。


レンはそれを聴いた瞬間、ものすごいむなしさに襲われます。
あんなにも求めていた櫂が自分を選んだのに、なぜちっともうれしくないのだろう。
自分が殴った女の子。かつてむりやりに抱いた女の子。

ふとレンは、ガラスに映った自分の姿を見ました。
そこには、


そこには、かつて自分を罵り鞭打った父親がいました。
彼の父親は自分に瓜二つの容姿を持ちながら、万事に置いて要領の悪い息子が我慢ならず、
完璧たることを強要し、それができないと怒り狂って体罰を与えていたのです。
(似てる云々は私の想像ですけどね。レンパパが完璧主義者だったのはホントらしいだよ)
PSYクオリアの力で頭の中をかき回して無力な存在にしてしまった父親。
なぜその父親が、ここにいる?

レンは絶望し、発狂します。かつて自分を虐げ、自分が退けた父親。
今の自分の姿も、強さを誇り弱者を切り捨てるその振る舞いも、櫂に対しての仕打ちも、何もかもすべてかつての父親そのものではないか。
憎んでいたその存在に、いつのまにか自分がなっている。その凄絶なパラドックスを突き付けられ、
レンの心は粉々に砕かれてしまいます。
(この辺はまあ後でもうすこし穏便に訂正しよう)
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【2012/05/31 09:45 】 | 短い話 | 有り難いご意見(0)
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