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【2025/07/28 18:45 】 |
バカ男子
バカ男子の生態をイメージするしかない。
「何てったって、俺が渡したタイニィレックスの鉤爪だろ」
「そんな小物! アークバードの冠羽のほうがずっときれいだ。あの子の目とおんなじ色だぜ。頭つつかれたときにむしってやったんだ」
「ああ、だからお前頭頂部ハゲてんのな。……キャノンギアの撃った弾って、アリだと思う?」
「俺が女でもお断りするレベル。やっぱ、俺があげたデスレックス将軍の尾棘が一番だな」
「俺、シールドンの鱗」「薬草」「河原で拾った光る石」
「お前はどうなんだよ、デストロイヤーの弟! あの子と長いこと話してたじゃないか」

輪から外れて武器を無心に研いでいた少年は、突然話を振られて不機嫌そうにため息をついた。「……何にも。何も渡してねえ。あと、デストロイヤーの弟って呼ぶのはやめろよ、ぶっ殺すぞ」
「んなこといったってよお、ホントのことじゃねえか」
「俺は嫁なんて欲しくない。ただ戦士として生きて死ぬ。それでいい。兄貴もあの女もどうでもいい」


デストロイヤー。武勲を立てし栄光ある破壊者、戦士の中ではキングに続き誉れ高い称号。無論それほどの存在であれば血を受け継ぐ子供も強さが見込まれるため、容易に結婚が認められる。万一その時点で結婚可能な女がいなくとも、夫が戦死した妻がいれば次の嫁ぎ先として自動的に縁談が持ち上がるようになっているし、次世代の少女が大人になるのを待って娶ることもできる。
少年の兄は成人と同時にデストロイヤーの名を授かったが、長い間独身だった。結婚するはずだった娘が突然の病で逝ってしまったのだという。本人の才は申し分ないのに立場はそこいらの若者と変わらぬ『未婚の成人』であることが彼のプライドをいたく傷つけていたのだろう、3年前に未亡人と結婚するまで、手の付けようのない荒くれ者だった。だがその粗暴なふるまいさえ許されるほどに強い戦士だったのだ。兄は少年の憧れだった。
それが今では妻子を溺愛する子煩悩な父親だ。前の夫との子にも自分の子にも分け隔てなく愛情を注ぎ、酒に酔えば自分の妻がいかに素晴らしい女性かを延々と語り、最後は決まって「結婚ってのはいいぞお! お前もおれの弟だ、きっと嫁を貰えるような立派な戦士になれる!」とげはげは笑って言うのだ。
はっきりいって、余計な世話だ。今の兄はおかしい。戦場ではまともかもしれないが、少なくとも村にいる時の兄はデストロイヤーの名にふさわしくない。
結婚した連中がみんなああなるなら、一生童貞で構わない。少年はそう思っていたし、周囲の人間にもそう言ってはばからなかった。
だが思春期の少年である。



彼らが居座っているのは、集落から少し離れた森の中にある巨大な天幕だ。サベイジは女の数が非常に少なく、成人して親元からは独立したはいいが結婚の予定がまるで立たない男が大勢出る。そうした男達はまとめてこの部屋に放り込まれるのだが、独立前の少年達も勝手に潜り込むこともあり、右を向いても左を向いても男、男、男で溢れ返っている。裸同然で雑魚寝をする者、猥談に花を咲かせる者、遊戯に耽る者、酒を飲む者、そのやかましさと暑苦しさは筆舌に尽くしがたい(だから集落から遠ざけている)。少年達にとっては大人の仲間入りをしたつもりになれる絶好の場所というわけだ。
その会話に耳を傾けながら、やはり話に花を咲かせる男たちがいた。

「ヒヨコどもはお姫様への貢ぎ物談義に夢中、か。若いね、まったく」
「うらやましいったらないぜ。ああ、女! 女抱きてえ! 童貞のまま死ぬなんぞ俺ァごめんだ」
「爺の時代には、男10人で1人の女を共有してたって言うぜ。それでもいいから結婚してえよなあ。順番が回ってきたら女を寝床へ放り込んでよう、『昨日の男より感じさせてやるぜ』、なーんちゃって!」
「かーっ! 死ぬまでにいっぺん言ってみてえよそんな台詞! そういやあ、こないだロイヤルパラディンと小競り合いがあった時なんだけどよ、俺、族長の妻に術をかけてもらったんだぜ」
一人の男が得意げに呟いたその言葉に、他の男が色めき立つ。「マジかよ」「爆発しろ」「パチこいてんじゃねーぞ童貞」「おめーも童貞だろ」
「マジだって。まあ聴けよ。その時俺はヴァンガードだったメガレックス中尉をお守りするため、ブルートザウルスと一緒にあのクソ忌々しい優男、ブラスター・ブレードの一撃を身代りに受けたんだ」
敵国の騎士の名が出た途端、一斉にブーイングが起こる。ロイヤルパラディンには細面の戦士が多いが、屈強な肉体こそ至上と考えるたちかぜの男にとっては唾棄すべき存在だった。
「青い犬っころの支援を受けてはいたが、俺たちでガードしきれると思った。ところが運の悪いことに今度はピンクの犬っころの力でブラスター・ブレードは強化され、しかも攻撃を終えたはずのゴードンが立ち上がりやがった。猛攻を防ぎきれず中尉は連撃を喰らい、俺はむざむざ退却させられちまったわけだ。ところが!」
男の戦語りに、少年達もいつしか聞き耳を立てていた。彼らがここに入り浸る何よりの理由こそこの戦闘の経験談、古の物語ではない生の戦士の声である。
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【2011/11/04 11:22 】 | 短い話 | 有り難いご意見(0) | トラックバック()
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