トースターの音で目が覚めた。
俺はゆっくり二、三度まばたきながら上体を起こし、見知らぬ天井や壁をぼけっと見ていた。
あちこちきしむ関節をさすっているうち、夕べの出来事が徐々に蘇ってくる。
そうだ。くびり殺されかけたのだ。三和さんに。しかもベッドに押し倒されて。つまりここは三和さんの家だ。
それなのに俺ときたら、気絶したまま一晩ぐーすか寝ていたわけだよ。我ながら、あらゆる意味で危機管理ってやつが足りねえぜ。
しかし幸い、こうして生きている。そして制服のままということは、どうやら何事もなかったらしい。
そう理解した瞬間、全て思い出して急に背筋が寒くなった。首に触れる指、吐息、なによりあのおっかない声!
『他人の幸せのために、お前が不幸せをしょってるってこと、あいつらは知らないのに…かわいそうに…』
かわいそう。
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miserable【形】みじめな・不幸な・哀れな
→ misery
Q1.:以下の英文を訳しなさい。
What a miserable boy you are !
A1.[
君はなんてかわいそうな少年なんだろう! ]
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「朝からたそがれてんなよ、オマエ」
不意に軽く頭をはたかれた。いつの間にかベッドの傍には三和さんが立っている。
「メシ食おうぜ」
促されるまま食卓に座る。
一人暮らし用の小さいテーブルには、溢れんばかりの皿がひしめき合っていた。
サラダ、焦げたトースト、バター、色とりどりのジャム(輸入物なのでラベルのイラストでしか中身が判断できない)、山盛りの焦げたウィンナー、マグカップに注がれたコーヒー、焦げたベーコンエッグ、グレープフルーツ、ヨーグルト。ところどころ黒いのはともかく、豪勢なメニューだ。
「いただきます」
「はいどうぞ」
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