「カツアゲ、ねえ……俺ァ初めて聞く話なんだが、稲永、事と次第によっちゃあ」
「赤堀、しまって、その包丁は降ろして!」稲永と呼ばれた少年が青ざめ、助けを求めるように隣の少年にすがるような目を向けた。「いや、まあ、はあ、そういうことも大昔にはあったけど、でもほら今はこうして和解したわけだよなあ先導」
「え、う、うん…でも、もういいんだよ。森川くんも、井崎くんも、稲永くんも、赤堀くんも、今はみんな友達だよ」
若干困った顔をしながら答えたのは、後江中学校カードファイト研究部(通称CF研)の新入部員、先導アイチである。つい先日、暫定部長の森川カツミとのファイトを経て新たな仲間となった。
アイチと唯一面識のなかった赤堀が入部のなれ初めについて尋ねたところ、どうもなにやらきな臭い一件があったこと、その首謀者が自分を除くCF件の3名であったことが明るみに出た。
アイチの言葉に一応納得したのか、赤堀は手にした包丁を机の上に置いた。
「ふん、どうせ森川が実行犯で、お前と井崎がおヒキなんだろう。よくよく腰巾着の似合うツラだと思っていたが……ともかく、そういう悪い子に、今日のおやつをあげるわけにはいかねえな」
鞄の中からやや長い棒のようなものを取り出し、竹皮の包みを剥がす。「先導、俺とお前で山分けだ。食おうぜ」
あっ、と稲永が声を上げる。「それは、唐獅子屋の高級羊羹『闇椿』!お前どこでそんなものを」
「女ってのはな、例え受験生の息子を持つ中年主婦でも、お取り寄せスイーツって奴が好きなんだよ。そして後先考えずに注文してから、やっとこさ自分の体型や血糖値を気にして、処分を押し付けてきやがる。わかるか?」
「だいたい貴様のよーな時代遅れの脳味噌筋肉管理教育主義者がのさばるせいで、千変万化する昨今のグローバル社会を生き抜くべき若人が不当に抑圧され、芽を出す前に刈り取られるのがわからんのか!権力者の太鼓持ちと生徒いびりに勤しむ貴様ごときが、前途ある青少年の規範たる教師を名乗るなど笑止千万噴飯ものよ!」
「「異議なし!!」」
PR