誰かと一緒に学校へ行く。休み時間にお喋りをする。お昼を食べる。ファイトする。帰り際、また明日ねって手を振る。
みんなできることが、僕にはできなかった。
友達の作り方は、どの教科書にも載ってなかったし、どの先生も教えてくれなかった。
テストでいい点をとっても、宿題をきちんと提出しても、一番大事なことがわからないままだったから、ちっとも幸せじゃなかった。
だってこんなもの、ひとりぼっちをごまかすためにむりやり勉強した結果なんだ。ほんとは勉強なんてそんなに好きじゃないんだ。
もしかしたら僕の知らないところで、僕以外のみんながそれを教わったのかもしれないし、
あるいは生まれつきみんな知っているのに僕だけ知らないまま生まれてきたのかもしれない。
そうだとしたら、人にうまく話しかけられないのも、忘れ去られるのも、時々後ろから突き飛ばされるのも、
全部僕のせいだ。
手を差し伸べてくれた櫂くんはもういない。
ああ、もう、どうしようもないのかな。
このまま下を向いて生きるしかないのかな。
何でもいい。誰かと、何かが、したい。
一人じゃできないことがしたい。
どうしたらいいのかわからないけど、いつかこんな自分を変えたい。
変わりたい……
***
下校時間のチャイムが鳴る。
はっとして顔を上げた。机にうつぶせたままの姿勢で寝てしまったらしい。
窓から差し込む西日が、まだ夢見心地のアイチを照らしている。既に教室は無人で、校庭から運動部の掛け声も聞こえなくなっていた。
世界から取り残されたような寂しい光景に、もしかしてこれは夢の続きではないかと錯覚しそうになる。
自分はまだ、あのみじめで孤独な子供のままなのではないか?
寝起きの瞼がじわりと熱くなった。息苦しさとともに、不安が足元から背中へ駆け上がってくる。
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